「おい、寿司でもとれ。特上のにぎり十人前だ。誰かビール買ってこい。前祝いするぞ」 全身に衝撃が駆け抜けた。さっき、刑事に止められたのだ。手をつかまれたのだ。なぜ自分は忘れていたのか——。
「私のこの姿を寧温様に見せられる日が来るとは……。この絣の着物は寧温様が遠い八重山から私に贈ってくれたものなんだよ……」 運転手はミラーの中の青豆の顔をちらりと見た。彼は淡い色合いのサングラスをかけていた。光の加減で、青豆の方からは表情がうかがえない。
張っていた腹部が少し緩んだ。身体がらくになった。 どうでもいいけど早く帰らせてくれよ。
もっともこの時点では、湖面に垂れた浮きがかすかにふれた程度の手応えでしかなかった。九野も服部も、会計監査の件にさしたる期待はしていなかった。 琉球を去った雅博は薩摩で昇進していた。琉球の事情に明るい雅博にとって適職ともいえる地位だ。しかしこれが今日の二人の溝《みぞ》となっている。
親は完全に諦めた様子だ。警察沙汰だけは避けてよねと懇願し、不肖の息子に関心を示そうとしない。母親は一人カルチャーセンターなんかに通いだした。 嗣勇は最後の一滴まで泡盛を呷《あお》って抱瓶《ダチビン》を捨てた。途端、嗣勇の目に怒りの炎が立ち上がる。
九野は茫然とした。頭の中が真っ白になった。 九野は茫然とした。頭の中が真っ白になった。